外科医を目指す先生へ

留学体験記(小児外科 藤雄木 亨真先生/アメリカ マサチューセッツ総合病院)

留学先

米国 ボストン
マサチューセッツ総合病院救急部Emergency Medicine Network Transrational Research Unit

藤雄木 亨真先生

現在の勤務先

国立成育医療研究センター 小児外科

留学時期

2019年9月〜2022年3月

なぜ留学をしようと思ったか

一般外科研修後、埼玉県立小児医療センターなどで小児外科医として勤務した後、大学院に進学しました。博士課程では、公共健康医学専攻 臨床疫学・経済学教室(康永秀生教授)にて主に医療ビッグデータを用いた臨床研究に従事し、関連する応用統計手法を学びました。以前から留学希望はありましたが、大学院での研究を通して、ビッグデータ研究の先進国であるアメリカで研究をしてみたい、つまりはOmicsデータを加えたtransrational researchや機械学習などを用いた解析にチャレンジしたいと思うようになり、2019年9月より米国マサチューセッツ総合病院救急部Emergency Medicine Network Transrational Research Unitに留学いたしました。留学先では大規模な前向きコホートを用い、臨床とオミクスデータ(ゲノム、メタボロームなど網羅的な生体分子情報)を統合して小児喘息、細気管支炎などの疫学的病因を解明する研究をしました。

マサチューセッツ総合病院 正面玄関
マサチューセッツ総合病院 正面玄関

留学してよかったこと

今後のライフワークになるであろう研究の土台を築くことができたことが一番の収穫です。留学だけでなく大学院での研究も含めてですが、医療をより良くするために真摯に科学と向き合うこと、医療と医学の密接な関係をしっかり意識できるようになったと思います。また、日本での専門分野(小児外科)から思い切って飛び出して、さまざまな国の異なる専門や職種の方と共同で仕事をして刺激を受けられたことは何にも代えがたい経験になりました。日本でもワークライフバランスという点が問題提起されるようになって久しいですが、それは決して仕事の割合を減らすということではなく、仕事を分担し効率よくハードに仕事をすることであると思うようになりました。

研究室の机からチャールズリバーを眺めて
研究室の机からチャールズリバーを眺めて

大変だったこと

渡米して半年でパンデミックになったことです。異国の地で研究もまだ軌道に乗らないなかで、生活がどうなってしまうのかという不安はとても大きいものでした。さらに大統領選挙や人種問題のデモ活動、国会襲撃事件…街の雰囲気やTVやネットから流れる放送内容は一時期ものものしくなり、私生活でもアパートの水回りや冷房・車の故障など様々なことがありました。しかし幸いにもボストンではおおむね医療体制も安定したまま、生活は徐々に日常を取り戻していきましたし、私生活でのトラブルも今となって振り返ると不思議な充実感があります。コロナ禍の大変な時期を国内で経験していないことは良いことだけではないと思いますが、文化の異なる圏内での人々や国の反応、ワクチン接種などの医療体制を垣間見て経験できたことは貴重でした。残念ながら、帰国時まで街全体にパンデミック前の活気が完全に戻ることはありませんでしたが、研究室ではテレワークできる状態が整えられ、研究が大きく滞ることはありませんでした。業種などによりテレワークの割合はどこの国も異なると思いますが、おそらく永続的にハイブリッドの形でテレワークが取り入られていく方向性を感じました。

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