外科医を目指す先生へ

先輩医師より

大腸・肛門外科

岸川 純子先生(2005年、東京大学卒)

卒業後のキャリアについて教えてください。

卒後1-2年:初期研修(茨城県立中央病院と東京大学医学部附属病院)
卒後3-5年:東京大学の外科専攻医プログラムにて旭中央病院外科に勤務
卒後6年:東京大学医学部附属病院大腸・肛門外科、血管外科、東京大学医科学研究所附属病院にて研修
卒後7-10年:東京大学医学部附属病院大腸・肛門外科に入局し、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻博士課程に在学(卒後10年目に長男を出産)
卒後11-12年:同院同科で外来や研究活動に従事
卒後13-14年:東都文京病院外科勤務(卒後13年目に長女を出産)
卒後14-16年:米国ダナ・ファーバー癌研究所、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院に留学
卒後16-17年:東京大学医学部附属病院大腸・肛門外科勤務
卒後17年:関東労災病院外科勤務
卒後18年-:東都文京病院外科勤務

なぜ大腸・肛門外科の道を選ばれたのか教えてください。

初期研修で、先輩方の執刀する手術を受けて元気に退院される多くの患者さんをみて感銘を受け、外科の道に進むことを決めました。東京大学大腸・肛門外科では癌や緊急疾患だけでなく、炎症性腸疾患などの慢性疾患にも精力的に取り組んでおり、幅広く学べるのが魅力と感じました。

大腸・肛門外科の面白いところはどこでしょうか?

私が医師になった頃と比べて、大腸・肛門外科の分野では腹腔鏡やロボットによる精密な手術が普及し、また化学療法においても分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新規薬剤の開発による進歩が著しい分野であり、学ぶことが多くあります。また、肛門疾患については女医の需要が高くやりがいを感じます。

育児をしながら医師として働かれていますが、どのような点が大変だと思いますか?それに対し、どのような工夫をされていますか?

私はとりたててパワフルなタイプではありませんので、長男を出産後は外来中心に診療を行ったり、長女を出産後は留学したりと、無理なく育児との両立をさせていただくことができました。これはひとえに医局に理解をいただいているおかげであり、医局に所属する最大のメリットであると感じています。消化器外科は長時間の手術や急変も多く育児との両立は難しいですが、現在は体表手術や化学療法症例を中心に受け持つことでキャリアをつないでいます。また近年ではコロナ感染症の影響で出勤停止になる事態も多くありましたが、家族や同僚の協力、病児保育などの利用で何とか乗り越えることが出来ています。

女性外科医を目指す方に一言お願いします。

私の経験が少しでも参考になれば幸いです。ぜひ一緒に頑張ってみませんか。

大腸・肛門外科

福井 梨紗先生(2012年、名古屋市立大学卒)

卒業後のキャリアについて教えてください。

卒後1-2年:初期研修(東京大学医学部附属病院 [旧] 外科重点プログラム)
卒後3-5年:東京大学外科専攻医プログラムにて茅ヶ崎市立病院 外科に勤務
卒後6年:東京大学医学部附属病院 大腸・肛門外科に入局し、チューベンとして勤務
卒後7-10年:東京大学大学院医学系研究科外科学専攻 腫瘍外科 博士課程に入学、博士号取得
〔卒後8年目、10年目にそれぞれ長男・長女を出産〕
卒後11年:横浜市立大学附属病院 臨床腫瘍科で固形がんの化学療法および緩和医療を修練
卒後12年-:東京大学医学部附属病院 大腸・肛門外科 関連病院の一つである関東労災病院 外科にて勤務

なぜ大腸・肛門外科の道を選ばれたのか教えてください。

医学生の病院実習で、原発巣の進行により通過障害をきたした消化管の癌を患った患者さんが、その切除術を受けてから日に日に回復し、最後は食事を食べて退院されるまでの姿を見て感動し、消化管の外科に憧れを持つようになりました。
初期研修医では、結腸・直腸の膜の解剖を熟知された先生方の美しい手術を見るうちに、これを極めれば極めるほど患者さんに還元できるすばらしい仕事だと考えるようになりました。さらに、東大の大腸・肛門外科の先生方の、症例に対する真摯な姿勢に心打たれ、大腸・肛門外科の門をたたかせていただきました。

大腸・肛門外科の面白いところはどこでしょうか?

大腸癌の手術は、「悪性腫瘍の根治、郭清」と「自律神経の温存」の両立がテーマの一つだと思います。ロボット手術や腹腔鏡手術の台頭により膜の解剖が拡大視でき、精緻な手術が可能となっていますがそれだけ、ごまかしのきかない操作・忍耐、が要求される、挑戦しがいのある面白い分野と思います。自分の技術を細かく磨くことが患者さんの予後延長と機能の温存、ひいてはQOLの向上に影響しうるので、良いモチベーションになります。

育児をしながら医師として働かれていますが、どのような点が大変だと思いますか?それに対し、どのような工夫をされていますか?

私はいわゆる「中堅」の年となってからの出産でした。出産前の、好きなだけ働くことができた若手時代とはガラッと変わり、原則「保育園の預かり可能な時間内」という制限時間が、勤務につきまとうようになりました。そのことで、仕事が完遂できず自己嫌悪に陥ること、周りに申し訳なく思うこともしばしばでした。子育てを理由に仕事を妥協したくないという理想と、現在3歳と1歳になる子供に愛情を注いで育てたいという気持ちが自分の中で乱立し、ただ、両方を完璧に行うということができずに、葛藤したこともありました。
そこを補完するための現実的な工夫としては、日中の保育園に加え、近くに住む家族のほか、病児保育可能のベビーシッターさんや行政の「ファミリーサポート」の提供会員さんにも助けてもらっています。時短家電はおおいに活用、家事代行サービスも利用させて頂いています。今時はいろいろなサポートがあるので、子供の無理のない範囲で頼らせて頂いていますし、医師である主人も今時のお父さんとして前線に立って子育てしています。まさに総力戦、そのおかげで私の負担が減り、外科でフルタイムの勤務ができ、早朝のカンファも参加できています。
大腸肛門外科は関連病院が豊富なことも、非常に大きなメリットでした。夫の勤務地および自宅が都内ではないのですが、自宅から通える関連病院でのポストを与えて頂くことができました。当科には同様に子育てをしながら、外科を続けている女性医師が多数在籍しており、様々な先輩からアドバイスを聞くこともできました。
ただし、オンコールや当直業務はまだ、周りの先生方と比べて少し頻度は減らして頂いているのが実情です。教授から「個人個人のライフステージに合わせた働き方を、医局は受け入れるべき」と、お言葉を頂いたことがあります。現在の勤務地の関連病院の上司は、だからといって私を必要以上に腫れ物とせず、今できる範囲で最大のことができるように、ご配慮くださっています。
少し加減をしていただきながら、自分ができる範囲最大限外科の仕事ができているので、子育てをしていることで特別気を遣うということは全くありません。これは、現代に沿った雰囲気のある医局のご高配のもと、東大外科の関連病院のご理解のある先生方と共に働けているからだと思っています。

女性外科医を目指す方に一言お願いします。

働き方改革も進んできており、これからの女性消化器外科医の需要は高まっています。消化器外科に興味があるのに、働き方の面でそれを断念して他の診療科に進むのは、もったいないと思います。子育てや家事に関わるサポート環境や条件は人それぞれ千差万別ですが、出産後直面する「こう働きたいという理想と、出産後に制限がかかるという現実との両立問題」は程度の差あれ生じると思います。これを、長い目でみたライフプランの一部分として東大の医局・関連病院が理解してくださっています。私はライフステージがかわった今こそ、東大の外科プログラムから消化器外科人生を始めてよかったと思っています。ぜひ選択肢の一つとしていただけたら幸いです。

肝胆膵外科

冲永 裕子先生(2005年、札幌医科大学卒)

冲永裕子先生
卒業後のキャリアについて教えてください。

卒後1-2年:東京大学医学部附属病院臨床研修プログラム
(東京大学医学部附属病院/旭中央病院)
卒後3-6年:東京大学医学部附属病院外科専攻医プログラム ※卒後4年目:長女出産
(藤枝市立総合病院/船橋二和病院)
卒後7-9年:東京大学医学部附属病院肝胆膵外科・人工臓器移植外科 勤務
東京大学大学院医学系研究科外科学専攻博士課程に在学
※卒後8年目:長男出産
卒後10-12年:JCHO東京高輪病院外科 勤務 ※卒後10年目:次男出産
卒後12-13年:東京大学医学部附属病院肝胆膵外科・人工臓器移植外科 勤務
卒後14-16年:NTT東日本関東病院外科 勤務 ※卒後15年目:次女出産
卒後17年-:がん・感染症センター 都立駒込病院肝胆膵外科 勤務

なぜ肝胆膵外科の道を選ばれたのか教えてください。

初期研修での外科勤務で、難しく長い手術・複雑な周術期管理をこなし患者さん優先で臨床に携わる先輩たちの姿に憧れを頂きました。肝胆膵外科以外の志望科が浮かばず卒後2年目に入局希望を医局に伝えました。

肝胆膵外科の面白いところはどこでしょうか?

肝胆膵外科の魅力は実質・管腔臓器・血管と取り扱う臓器が多岐であること、炎症や術前治療、腫瘍の浸潤による修飾によって手術難度が幅広く一般的な高難度手術の先の世界があること、解剖破格に富む領域で症例各々での正確な解剖理解が必須であるところです。周術期管理も含めて興味の尽きるところがありません。また、近年従来の開腹手術とともにMinimally Invasive Surgeryも急速に台頭し今後も発展し続ける外科領域だと思います。

育児をしながら医師として働かれていますが、どのような点が大変だと思いますか?それに対し、どのような工夫をされていますか?

私は医局にとって初めての子育て女性外科医であったため、自分がどこまでできるかということをしっかり伝えることから始まりました。家庭の事は、同じ医局に所属する夫と平等に協力していますので医局員の先生方も私たち夫婦の普段の動向をとってもよく知っていらっしゃるのではないかと思います笑。今でも大変なことは、デスクワークのゴールデンタイムになる夜7-10時が家庭(子供たち)にとってもゴールデンタイムであるというところです。仕事を円滑に行うことと子供たちを健康的に育てていくための時間のマネージメントが今でも非常に難しく感じます。時間外勤務や家庭生活の維持のためのアウトソーシングは10年来活用していますが、仕事でもプライベート環境においても周囲の方々、出会った人々との良好な関係の構築が両立を続けていくために大切な事だと考えています。

女性外科医を目指す方に一言お願いします。

東京大学肝胆膵外科・人工臓器移植外科は、日本で最も多くの女性肝胆膵外科医を育て輩出している医局です。男女問わず各々の夢や希望に向けた幅広い選択肢があり、妊娠・出産などライフステージに合わせたバックアップは先生方のキャリアプランに大きな後押しになると思います。ぜひ一緒に働けることを楽しみにしています。

胃・食道外科

岡本 麻美先生(2008年、日本医科大学卒業)

岡本麻美先生
卒業後のキャリアについて教えてください。

卒後1-2年:初期研修(東京大学医学部附属病院と関東中央病院)
〔卒後2年終盤に長男を出産、卒後3年目は産後・育児のために無所属〕
卒後4-6年:東京大学の外科専攻医プログラムにて山手メディカルセンター外科に勤務
卒後7年:東京大学医学部附属病院胃食道外科に入局し同院同科にて勤務
卒後8-11年:東京大学大学院医学系研究科外科学専攻博士課程に入学・在学
〔卒後8年目に次男を出産〕
卒後12-14年:公立昭和病院消化器外科勤務
卒後15年-:東京大学医学部附属病院胃食道外科にて勤務

なぜ胃食道外科の道を選ばれたのか教えてください。

初期研修医時代から、全身の臓器を見ることのできる外科医を目指したいという気持ちがありました。やがて初期研修のローテーションのなかで、外科分野のなかで胃食道外科を選択した際に、上司の方の医療に取り組む姿勢や医局の雰囲気を含めて強い魅力を感じました。卒後3年目に出産・育児のブランクが1年あり、自分のキャリアについて改めて熟慮する機会を得ましたが、やはり外科に進みたいという思いは変わらず、外科専攻医プログラムに応募して胃食道外科医としての道を選ぶことになりました。

胃食道外科の面白いところはどこでしょうか?

外科の分野全体を通して言えることでもありますが、自分がおこなった手術が治療の成否を大きく左右する点こそ、働くなかでの醍醐味であると思います。また、腹腔鏡手術のような細かな操作の積み重ねを通じて、「手術」というひとつの大きなプロジェクトが完成していく点にこそ強い魅力を感じています。繊細な手術操作が必要とされ、解剖の理解と技法の習得が強く求められる点に、医師としての仕事の醍醐味を感じています。

岡本先生は育児をしながら消化器外科医として働かれていますが、どのような点が大変だと思いますか?それに対し、どのような工夫をされていますか?

プログラムの全体を通じて、所属先・研修先における上司・同僚・後輩が「子育て女医」の働き方や、妊娠期ほか体調面で当直勤務が厳しい状態のときの申し出に対して、快く理解を示してくれる方が多いと感じてきました。一般的には「旧態依然としている」とも評される外科の社会ですが、変化は確実に起きはじめていると感じます。私は決して、女性消化器外科医として道を切り拓いてきた先達の先生方のようなスーパーウーマンではないのですが、それでも外科医として働き続けてこられたのは、周囲の優しさと理解のおかげです。
外科の大変な点は、やはり当直・オンコール業務でしょう。日々の業務についても、他科と比較して就業終了時間が遅くなることもあります。これらについて、家族や実家の両親、社会的資源(シッター会社等)のサポートが必要であることは事実です。ただ、通常業務では経験しない緊急手術の対応や急変時の対応など、時間外の勤務を通じてこそ学べることもたくさんあります。
過去の経験上、「子育て女医」であることを理由に手術を割り振られない、といった不利な処遇を受けたことはありません。楽ではないと感じる業務もありますが、それ以上に手術をする楽しさや患者さんとのやり取りにやりがいを感じる職場であると感じます。

消化器外科医を目指す女性外科医に一言お願いします。

女性であるからという理由で選択を迷っているのであれば、私のような女医の事例もあるということを、判断の一材料にしていただければと思います。次世代を担う女性外科医の皆さんをお待ちしております。

小児外科

竹添 豊志子先生(2008年、昭和大学卒)

竹添豊志子先生
卒業後のキャリアについて教えてください。

卒後1-2年:日野市立病院初期研修
卒後3-5年:東京労災病院外科で勤務
卒後6-9年:国立成育医療研究センター外科で勤務
※卒後8年目に長女出産
卒後10年:東京大学医学部附属病院小児外科で勤務
※卒後10年目に次女出産
卒後11-14年:東京大学大学院博士課程進学(栄養疫学を専攻)
※卒後12年目に長男出産
卒後15年~:埼玉県立小児医療センター外科で勤務

なぜ小児外科の道を選ばれたのか教えてください。

初期研修で、消化器外科の手術の面白さに惹きつけられました。腸管の手術、とりわけ再建が好きと外科の先生に話したところ、「それなら小児外科も面白いかもよ」と言われたことがきっかけで、見学に行ったり、小児外科の先生にお話を伺ったりして興味を持ちました。成人消化器外科での後期研修も非常に充実していて最後まで迷いましたが、最終的には、子供が好きだったこと、女性という自分の強みを生かせるのではないかと思ったことが小児外科を選ぶ決め手になりました。

小児外科のやりがい、面白いことはどんなところでしょうか。

訴えを声にできない子供たちと、その子供たちを支えているご家族に寄り添い、双方にとってどのような治療が最も幸せかということを、子供の成長や病態の変化に応じて考え提案していくというきめ細やかな医療に、やりがいを感じています。提案する治療の選択肢の一つに手術があることこそが小児外科医の強みなので、確かな技術でお応えするための努力と準備を怠らない、そしてそれができたときの達成感こそが醍醐味ですね。また、妊娠、出産、育児という自分の経験がそのまま診療に活きることもやりがいのひとつです。これらを経験する前と比べると、診療に深みが増したように感じています。

育児をしながら医師として働かれていますが、どのような点が大変だと思いますか?それに対し、どのような工夫をされていますか?

子供がいなかったときは、自分の時間をどれだけ仕事に費やそうとも自由でした。誰に遠慮することなく、自分の納得いくまで仕事ができましたし、患者さんのことが心配であればいくらでも病院にいることができました。しかし、子供ができると育児の時間が必要になります。自分にしかできないこと以外は夫と分担したり外注したりもできますが、あまりに頼みすぎると夫にも子供にも申し訳ない気持ちになります。申し訳ない気持ちを抱えつつ残業をすると、今度は患者さんに申し訳ない気持ちになり、結局どちらも完璧にこなすということができません。第一子を妊娠して以降、このジレンマにはずいぶん長いこと苦しみました。フルタイムの会社員をしている夫とは何度となく試行錯誤を繰り返し、最終的に、曜日で役割分担をするスタイルに落ち着きました。私、夫、シッターさんで子供のお迎え担当曜日を決め、オンコールや当直は自分の担当曜日以外に組んでもらうようにしています。曜日で固定すれば職場の同僚も、「あ、今日は火曜だから残れない日だな」などと覚えてくれていて、緊急手術も当たりません。そのかわり、残業できる曜日やオンコールの日は家のことを心配せずに残ることができますし、他の先生に「私がやっておくから先生は帰って!」と言ってあげることもできます。

女性外科医を目指す方に一言お願いします。

まだまだ女性の少ない外科の現場ですが、だからこそ、女性医師にできることがたくさんあると思います。特に若手の先生たちの間では、もうあまり男性だから、女性だからという垣根を感じることはなく、みんなのびのびと働いています。ぜひ一歩踏み出して門戸をたたいてみてください。

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